すのっぶにござりまする。

服飾を通して文化を学びたい男のひとりごと

ネクタイの長さについて

 初めましての方はお初にお目にかかります。中乃上 忠助(なかのうえ ちゅうすけ)と申します。そうでない方はいつも有難うございます。中乃上でございます。

 

 表題の「ネクタイの長さ」とはタイドアップした時の大剣がどこにあるべきかということです。「ベルトの穴部分でしょ」と覚えている方も多いのではないでしょうか。私もはじめはこのように覚えていましたが、ベルト着用が前提の基準がクラシックなスタイルにふさわしいのかと疑問を持ちました。ブレイシスでトラウザーズを吊り上げたときも存在しないベルトを想像して大剣を調整していましたが、赤峰幸生の大剣はウエストバンドよりも下部分までありますので、この基準は目安に過ぎないのでしょう。

 「ベルト着用の時はベルト穴辺りに大剣を持ってくれば良いとして、ブレイシスで吊り上げる時の大剣の長さはどうすれば良いのだ」と考えましたが、ブレイシス=ウエストコート着用と言うことを考えると、「ネクタイの長さなど考える必要はない」という身も蓋もない結論に至ります。大剣が長めであればクラシック、短めであれば軽快、という印象を与えますので、ブレイシスで吊り上げるクラシックなスタイルでは長めが良いでしょう(ジャケットの前裾からはみ出ないように調整するが良し)。

 「個人の裁量」というなんとも不明瞭な答えが出ましたが、大剣が長すぎてジャケットの前裾からはみ出ないように、逆に短すぎてシャツの前立てが見えてしまわないように、全体的なスタイルを鑑みて調整するのが良いでしょう。

 明確な答えやルールを作らないことは時に大切です。服飾を「点」で捉えてしまうと全体が崩れ、「木を見て森を見ず」状態に陥ってしまうことがあります。

 

 ルールや基準を求めるということは、「これさえ守っていれば良い」と脳死状態に陥る危険性を孕んでいます。ルールを守るにしても源流をしっかり理解し、意味を考えることが肝要であると言えるでしょう。

 

 御付き合い頂き有難うございました。また次回、お会いしましょう。