すのっぶにござりまする。

服飾を通して文化を学びたい男のひとりごと

夏のジャケパンスタイル インナーに半袖はアリか?

 初めましての方はお初にお目にかかります。中乃上 忠助(なかのうえ ちゅうすけ)と申します。そうでない方はいつも有難うございます。中乃上でございます。

 

 本格的な夏がやってきております。気温が30℃を超える日が当たり前のような気候で、湿度も高く「ドレススタイルが厳しいな」と思う時も多く感じますね。

 本日は所謂テーラードジャケット、ドレス系のアイテムに半袖インナーはアリか?というお話です。宜しくお願い致します。

 

 先ず申し上げておきたいのは本来的にはジャケットのインナーに半袖のシャツや襟無しのカットソーを着るのは絶対にNGです。「ジャケットの袖からシャツの袖が覗いていなければならない」などというちゃちな話では御座いません。本質的には「ジャケットを保護するため(ジャケットに皮脂等が付着し劣化するのを避けるため)素肌とジャケットが触れてはならない」ということです。いつの間にか本質が抜け落ちて形骸化していることは非常に嘆かわしいですね。

 

 しかし、カーディガンやハリントンジャケット等は半袖シャツやTシャツをインナーに持ってきても問題ありません。

 「カジュアル」とは「略式」という意味です。既存のスタイルを崩したりリラックスさせたものとも言えるでしょう。燕尾服のインナーはドレスシャツ以外有り得ません。それもピケ素材でディティールにも制約があります。それを崩したディナージャケットですが、勿論ドレスシャツ一択です。しかし、燕尾服に比べると自由度が高まります。

更に崩してスリーピーススーツになるとオックスフォードシャツでも許容されますね。

 今回の「インナーに半袖はアリか?」に対して「論外」で終わらせることができない理由はここにあります。「夏」の「ジャケパンスタイル」でとりわけ「カジュアルシーン」に於いてアリかナシかをお話して参ります。

 ジャケパンスタイルに限定したのはスーツスタイルの場合は半袖シャツやポロシャツ、ましてやTシャツは考えられないからです。ネイビーモヘヤのスーツに半袖の白いポロシャツは合わないことが容易に想像できます。リネンやシアサッカーのスーツであっても長袖のポロシャツが限度でしょう。半袖ポロシャツが有り得るスーツがあるとすればリネン・シアサッカーのどちらかでしょうが、難しいと考えられます。

 夏のジャケットは軽やかな仕立てや素材のものが多く、カーディガンのようにさらりと羽織ったり、カジュアルアイテムに近くなっています。インナーも合わせてカジュアルなものになっていきますが、「インナーのカジュアル化をどこまで許容するか」とも言えるでしょう。

 クルーネックはNGです。到底許容できません。この場合半袖インナーとは半袖のポロシャツや半袖のシャツです。ジャケットのインナーのドレスダウンは半袖のポロシャツ・ドレスシャツが限度でしょう。

 次はジャケット側の話です。モヘヤのブレイザーの場合は長袖のドレスシャツやポロシャツが合いやすく、半袖のインナーは厳しいと思われます。ジャケットもコットンやリネン、シアサッカーなどの素材が良いでしょう。そして仕立ては構築的なものではなく、裏地や芯地も極力排したもの、とりわけ袖裏地は素肌が触れ、べたつきや不快感を生んでしまうため無いものを選ぶのが重要です。

 サイズ感もよりシビアに考えるべきでしょう。本質を理解しているかどうかは別として、「ジャケットの袖からシャツの袖が覗いていなければならない」ということは常識になっていますし、ルール自体は間違っていません。シャツが覗いていることによる視覚的な「締まり」が生まれない、袖丈等が少しでも大きいとオーバーサイズのものを着ているような野暮ったさが生まれてしまう等の弊害が生まれます。

 

結論と致しましては「夏のジャケパンスタイルに半袖インナーは条件付きでアリ。インナーは襟付きのものを選び、ジャケットは素材や仕立て、サイズ感に注意。そしてインナーとジャケットのドレス度を吟味すべき。」となります。

 

 御付き合い頂き有難うございました。また次回、お会いしましょう。