すのっぶにござりまする。

服飾を通して文化を学びたい男のひとりごと

ボタンダウンシャツの源流を知る

 初めましての方はお初にお目にかかります。中乃上 忠助(なかのうえ ちゅうすけ)と申します。そうでない方はいつも有難うございます。中乃上でございます。

 

 本日は「ボタンダウンシャツの源流を知る」で御座います。源流を知るシリーズ2回目。中乃上の独り言シリーズとして扱うか迷いましたが、源流を知るシリーズと致します。そのため、この2つのシリーズの中間になり、雑談多めになるやも知れません。いつもそうだろう中乃上

 

 

 ボタンダウンシャツとは

 

 最近特に見かけることが多くなったボタンダウンシャツですが、襟の先にボタンホールを付け、シャツ本体に襟を固定したシャツです。今更説明の必要もないでしょうが、その源流となると話は別。「ポロ競技のために生まれたシャツだ。転じてタイドアップやビジネスシーンには適さない。」などとよく言われますが、実際はどうなのでしょうか。

 

 「ボタンダウンシャツ=ポロ競技」は間違いでない

 

 「ボタンダウンシャツはポロ競技のためのシャツであり、スポーティなもの。」この認識は間違っています。ボタンダウンシャツ=ポロ競技という等式については中らずと雖も遠からずと言った具合です。ブルックスブラザーズでは今でもボタンダウンシャツを「ポロカラー」と呼びます。

 ボタンダウンシャツはポロ競技から着想を得たブルックスブラザーズが開発した”ドレスシャツ”です。スポーツの為のシャツではありません。ただ、インスピレーションの素がスポーツですから、スポーティな印象を与えることは間違いなく、襟を固定するための機能的なボタンがついたシャツですので、フォーマルには適さないでしょう。タブカラーシャツも同じ理由でフォーマルには適さないでしょうが、ピンホールシャツは機能的なカラーバーを装飾品まで押し上げた印象がありますので良いのかなと思っております。中乃上の依怙贔屓なのでは...と中乃上自身も思います。

 ※中乃上はピンホールカラーシャツが大好きです。

 脱線を致しましたが、ボタンダウンシャツはドレスシャツです。「ポロ競技のためのスポーツシャツだからビジネスで着るな!ネクタイをするな!」と言う方が如何に浅はかかわかりますね。

 

 ボタンダウンシャツの誕生

 

 「ボタンダウンシャツはポロ競技から着想を得た」と申しましたが、これは当時のシャツ事情からお話するのが良いでしょう。当時のシャツはとにかく糊付けが硬く、とりわけカラーとカフスはプラスチックのようでした。簡単に洗濯ができない時代に汚れを防ぐ知恵。カラー部分は取り外しができ、釜で煮て糊と汚れを落としていました。ハードボイルドの語源はこれという説があります。ハード(硬いカラー)ボイルド(茹でる)柔らかい芯地のシャツが全盛の時代に時代錯誤ともとれる硬いカラーのシャツを着る頑固さを表した言葉ですね。固ゆで卵の説が一般的ですが、このような話も面白いのではないでしょうか。

 脱線を致しました。取り外しのできる糊でガチガチのシャツが当たり前の時代、ポロの競技者達はカラーを取り外せない芯地の柔らかなシャツを着て競技をしていたのです。観戦していたブルックス4兄弟(兄弟のうち誰かは不明)はその当時としては画期的なシャツに衝撃を受けました。しかし柔らかい襟はポロの激しい動きや風でパタパタとなびいてしまうため、襟を縫い付ける競技者もいたそうです。襟がみだりに動かないようにしたい...そうしてボタンダウンシャツが生まれました。

 

 ボタンダウンシャツはビジネスで着用してよいか

 

 ボタンダウンはドレスシャツです。タイドアップする前提で作られていますし、ビジネスで着用してはいけない道理はありません。先程も申しました通り、フォーマルには適さないでしょう。

 しかし、生みの親はブルックスブラザーズ。富裕層のために作られ、富裕層の間で流行しました。監査担当の方が現場に出向く際、超現場主義でホワイトカラーに反感を持つブルーカラー職員から「お高くとまりやがって」と謂れのない悪感情を向けられる危険性がないわけではありません。又、ボタンダウンシャツを認めない思慮の浅い方も多くいらっしゃいます。そのような方々に合わせる必要もないでしょうが、教養のない方は得てして自分の正しいと信じるもの(根拠なし)以外認めないきらいがありますので、無用なトラブル回避のためにも畏まった場などでは着用しないのが無難かもしれません。又、生みの親である米国と、アメリカナイズされている日本では当たり前のように着られていますが、欧州ではそこまで一般的ではありません。頭に入れておきましょう。

 

 ボタンダウンシャツは非常に優秀

 

 ボタンダウンシャツは首元にアクセントを与えてくれますし、襟のロールが美しく、タイドアップしてもアンタイドでもしっかり決まります。シャツの襟がジャケットの外に飛び出てしまうことも、トランクにシャツを詰める場合も襟が折れ曲がってしまうこともありません。非常に機能的なドレスシャツです。ただ、個人的にはカフリンクスは似合いにくいのではないかと思います。下着(シャツ)のボタンを見せたくないという思いからカフリンクスが生まれたからです。襟元のボタンは必ず露出しますし、機能とは別の目的があるカフリンクスと、機能的な襟のボタン...絶対に合わせていけないとは言いませんが、非常によく似合うアイテムとは言い難いでしょう。少なくとも私は意識的に避けています。

 カジュアルスタイルに於いても活躍してくれます。シャツ1枚でもジャケットを羽織っても、セーターをお召しになっても良いでしょう。非常に優秀なシャツです。

 

 久方振りの源流を知るシリーズ。独り言シリーズとの境界が分かりにくい気もしますが、御付き合い頂き有難うございました。また次回、お会いしましょう。